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== 旧たてぶえ天国 ==

楽しみかたのコツ

「音楽をやっていて一番楽しいのはどういう時ですか」と音楽家に訊ねてみると、つぎの答えが圧倒的に多い。

アンサンブルです。」

くわしく聞いてみると、それはジャズやロックのバンドだったり、同じ楽器の二重奏だったり、二人ならんで一台のピアノを演奏する連弾だったり、金管五重奏だったり、音楽の種類はさまざまだが、要するに室内楽、少ない人数による重奏や重唱らしい。

ここで言っているのは、あくまで自分で音を出していて楽しいかどうかを尺度とした話で、芸術性とか実用性とか、聴き手の楽しみを優先するのであれば別の形態も重要になるだろう。別に室内楽でなくても、例えば独奏でも管弦楽でも、素晴らしい芸術は沢山ある。それでも「やっていて」楽しいのは重奏・重唱なのだ。

小生も、リコーダー以外の活動として、合唱や吹奏楽を経験し、ジャズやロックのバンドでも演奏し、長年管弦楽の一員としてコントラバスを演奏してきたが、多人数での合唱・合奏より、少人数の重奏・重唱が何と言っても楽しい。

日本では、この楽しさが、専門家や愛好家のひそかな楽しみとして行なわれてきた様なところがあり、一般大衆にはあまり認識されていない。

みんなが知っているような高度な芸術を目指す音楽家は、孤独な研鑽が必要だから、一人で活動することが重要で、それで生活しなければならない。そして、まったくの初心者は、専門家の演奏を観たり聴いたりして目標や手本にするから、「どうせ楽器をやるなら独奏をしたい」と考える。かくして、楽器を習い始める人の多くが、選ばれた専門的独奏者を目指して練習をする。残念ながら、そのほとんどは挫折する。

本当は、音楽の初心者なら、なるべく重奏や合奏の機会を多くした方が、楽しくて励みにもなるのだ。そういうことに配慮した教則本もある。ピアノの入門用として知られるバイエルだ。この教本は、教師用と生徒用の本が出版されており、しかも、前半の曲の多くは、教師と生徒の連弾になっている。先生が低音部を弾いてあげることで、生徒は音楽の喜びを身をもって知ることができる様に配慮されている。

ところが、町のピアノ教室の先生には重奏の重要性が分かっていない先生も多いらしく、連弾の楽しさを知らないままの生徒も多い。生徒も、生徒用の本に載っている楽譜を見るだけでは、自分のさらっているつまらない練習曲が実は連弾の曲の一部であることを知らなかったりする。

また、高度な技術のことを小生は分からないが、超一流の音楽家でも重奏に熱心な人は沢山いる。独奏者でも、チェロのヨーヨー・マやヴァイオリンのギドン・クレーメルの様に、独奏と並行して重奏も活発にしている例は案外おおい。

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の合奏主任(コンサート・マスター)を勤めるヴァイオリン演奏家の安永徹は、ピアノ演奏家の市野あゆみとともに、毎年夏に、水戸芸術館で公開指導を行なっている。はじめは独奏と並んで室内楽の指導もしていたのだが、室内楽の応募があまりに少なく、ある年、とうとうヴァイオリン独奏だけになってしまった。そこで、つぎの年からは、公開指導の名称を「デュオ・セミナー」として、あくまでヴァイオリンとピアノの二重奏を研究する公開指導として再出発した。「ヴァイオリン独奏とピアノ伴奏」という一般的な理解のしかたではなく「ヴァイオリンとピアノの重奏」であること重視した。これなどは、重奏に対する優れた音楽家の考えを周りの人たちが理解していないことのあらわれだろう。

小生、ヴァイオリンは弾かないが、一度この公開指導を見学したことがある。非常に中身の濃いもので、音楽をやっている人ならば誰でも大いに参考になる内容だったが、見学者は非常に少なく会場はがらがらで、勿体ないことこのうえない話である。

さて、リコーダーの話に戻ろう。

実際、これほど重奏に向いた楽器というのもなかなか無いだろう。

音楽好きの仲間が集まったときに、一緒になにか演奏してみようと思ったとしても、適当な楽器と奏者が揃わないために諦めたという経験が、小生は何度もある。

たとえばロックの演奏なら、最低限ギター、ベース・ギター、ドラムスの奏者が必要だが、場所、楽器、人員、どれをとっても定期的に集まって練習している集団でなければ揃えることは難しく、日常の楽しみとしては制約が大きい。ジャズはもっと難しい。

クラシックでも、たとえば弦楽四重奏なら二人のヴァイオリンと一人のヴィオラとチェロが揃わないと演奏にならない。

リコーダーならば初心者二人からでも始められる。ほぼ、いつでもどこでもできる、と言ってよい。

また、リコーダーは同じ楽器同士でも良し、鍵盤楽器やギターとも相性が良く、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロなどの弦楽器とも合い、フルート、オーボエ、ファゴット、トランペット、ホルンとの重奏曲もある。

普段はクラリネットやチューバを吹いている人がリコーダーに持ち替えて重奏を楽しむという様なことも充分に可能である。

子どもがリコーダーをやめてしまう理由は、要するに、この楽器の特性を活かした使いかたがされていないことによる。その特性の第一番目として挙げておきたいのが、少人数の重奏に向いていることである。何十人もで同じ旋律を吹く様なやりかたでは、幼い子どもは別として、大きくなってからも続けたいと思う様な喜びは味わえないだろう。

楽しむために、もっとアンサンブルをしよう。

次回からは、リコーダーの特性について、さらに解説していくことにしたい。

追記 (2010年8月24日): 上記の文章は、99年の正月に、ネット上のある場所で公開したものです。このブログで再発表するにあたり、私の実名は省略しました。
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┃ Tag:リコーダー アンサンブル

┃ テーマ:リコーダー ━ ジャンル:音楽

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