== 旧たてぶえ天国 ==

魔法つかいの息子

「魔法つかいドルメッチ」の続きです。

アーノルドの率いるドルメッチ一家による古楽器の合奏は、20世紀になって次第に評判になり、あちこちに出向いて演奏するようになった。

そして事件は1919年の4月に起こった。安達弘潮(あだちひろみ)さんの本に詳しく書いてあることをここで要約する。

その日の演奏を終え、帰途についたドルメッチ一家は、さまざまな楽器を抱え、ロンドンのウォータールー駅で汽車を待っていた。この駅は終点と始発を兼ねており、発車間際になって一家は別のプラットフォームに移動しなければならなかった (30-32)。

楽器は、家族が分担して運ぶことになっており、アーノルドの愛用していたアルト・リコーダーは、当時8歳だった息子のカール・ドルメッチが運ぶことになっていた。ところが、大慌てで汽車に乗り込むとき、カールはプラットフォームにリコーダーを置き忘れてしまった (34)。

いろいろ手をつくして探したが、楽器はなかなか見つからなかった。幸い、細かい寸法を測って設計図にしてあったので、アーノルドはそれをもとに、自分でリコーダーを作ってみることにした (34-35)。

トムスンの論文によると、ただしい音程で演奏できるように指穴を配置するのが難しかったらしい。何度もやり直したあと、楽器は完成した。アーノルドは「ユリイカ、ユリイカ。やったぞ」と言って跳び回った (Thomson 145)。

この事件がきっかけで、ドルメッチ家はリコーダー製造でも有名になる。また、昔の楽器をただ復元するのではなく、現代における演奏に適するように、細かい変更も行なっている。たとえば、バロック時代の楽器は現代の楽器より半音程度音が低いのだが、アーノルドは楽器全体を少し短くして、現代の音程で演奏できるようにした (Thomson 141)。現代リコーダーの誕生だ。

その後、カールを筆頭に、ドルメッチ一家は、英国におけるリコーダーの普及に中心的な役割を果たし、現在に至っている (Blood)。

参考資料
Blood, Brian. Dolmetsch Online. <www.dolmetsch.com>
Thomson, John Mansfield. "The Recorder Revival I: The Friendship of
Bernard Shaw and Arnold Dolmetsch." The Cambridge Companion to
the Recorder
. Cambridge, England: Cambridge University Press, 1995.
137-51.
安達弘潮.『リコーダー復興史の秘密: ドイツ式リコーダー誕生の舞台裏』
東京: 音楽之友社, 1996.




追記 (2010.10.03): 上記の文章は、1999年にネット上のある場所で公開した文章です。今回、再掲するにあたって参考資料にあるドルメッチ社のURLを新しいものに直しました。
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